4 「……あら?」 不審の声をもらしたのはシホだった。 「今度はお前が視線でも感じたのか?」 立ち止まるシホへ、イザークが呆れ気味に声をかける。 二人が止まったので、自然とディアッカの足も止まった。 「いえ、たださっきの店……」 「店?」 「ほら、あんたが、視線がどーの言ってた時にあった店」 「……ああ」 つい数分前の記憶を掘り起こし――そんなに時間を要せず、ディアッカはシホの指す「店」を頭に描き出した。 そう言われてみればあの時、小さいながらも店があった。女性向けアンティークを取り扱っているような、それらしい店が。 「母が、コペルニクスに行くことがあったら、寄ってきてと言ってたお店だったような……」 「そーゆーことは、見つけた瞬間思い出せよ」 「隊長、戻って確かめたいんですけど、一緒に来てもらっても良いですか?」 「無視かい」 綺麗なスルーっぷりに、ディアッカは――いつもの事ながら、顔をしかめる。 「別に構わないが……ディアッカ、お前はどうする?」 「そりゃもちろん――」 あんな店に興味は無いし、別行動を取る――と言いかけて、気付いてしまった。 ――シホの企みに。 彼女はただ、イザークと二人っきりになりたいだけなんだと。母親云々の話も、でっち上げの可能性が高い。 目が訴えている。 ついて来たら殺す――と。 殺されたくはないが、このままシホの思い通りに事が運ぶのも面白くない。 となれば、 「――隊長にお供するさ」 勝ち誇った微笑をディアッカはシホに向けた。彼女は、心の底から悔しそうな顔をするものの、イザークの手前、それを表に出し切ることが出来ない。 こうして三人は、あの店に戻ることになった。 はっきり言ってシホは、アンティークになど興味は無い。 そして、出来れば母艦まで殴り帰してやりたい「おまけ」までついてきている。 店の前にやって来た時、彼女は頭を下げる道を選んだ。 「……すみません、隊長。記憶違いでした」 「謝ることはない。間違いなど誰にだってある」 「隊長……っ」 目を輝かせるシホを見るディアッカは、完全に呆れていた。 ――勝手にやってくれ―― 本気でそう考えた時だ。がちゃり、と店の扉が開いたのは。 出てきた二人組に、驚愕の眼差しを送ったのは―― |