「??」
「どうした? ディアッカ」
「や、何か、視線感じて……」

射る様な視線を感じ、ディアッカは辺りを見回した。イザークも気配を読もうとするが、それらしい人物は見当たらない。
ここは月の都市・コペルニクス。レクイエム爆砕の任を終えたジュール隊は、短いながらの休暇を得ていた。本当はプラントに戻りたい所だが、この後護衛任務が控えているため、月で数日、羽を伸ばすことになったのである。

「気のせいじゃないの?」
「そっかなー……」

シホの言葉に首を傾げながらも、ディアッカ達はその場を後にした。




<あぶない! すっごくあぶない!!>


ディアッカ達が通り過ぎるのを店の中から眺めながら、チャンドラは心臓をバクバクさせていた。
生きた心地がしない。
なんせチャンドラは――二年も前のこととはいえ――ディアッカが、どれだけミリアリアを好いていたかを知っている。
しかも彼は、振られた身だ。まだミリアリアへの恋心が、残っていないとも限らない。
いや、そんな話を抜きにしても――


<絶対邪魔される!!>


見つかったら、絶対彼は邪魔してくる。たとえ彼女への想いを断ち切っていたとしても、それだけは断言できよう。
それに、オーブとザフトは敵対関係ではない――とは言え……こんな所で「ザフト」と鉢合わせなど、好ましい状況ではない。
だから自分が、一緒にいるのだ。


<見つからないようにしなくちゃ……>


小物選びに没頭するミリアリアを眺めながら、チャンドラは気合を入れなおした。

「気に入ったの、あった?」
「もう……可愛いのばっかりで、どれにしようか迷っちゃいます!」
「何なら一個、好きなの買ってあげようか?」
「良いんですか?!」

思わぬ申し出に目の色を変えたミリアリアが、悩みに悩んで決めたのは、シンプルな写真立てだった。
包みを大事そうに持って、チャンドラに極上の笑顔を送る。

「ありがとうございます」
「そんな、気にしなくて良いよ。それより次、どこに行く? 何か食べに行く??」
「それも良いですね」

うきうきしながら、二人は店を出た。
そして、足を止めた。
いや――止まってしまった。

目の前にいる三人組を見て。

正確に言うと、右端に見えるディアッカを見て。

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