3 「??」 「どうした? ディアッカ」 「や、何か、視線感じて……」 射る様な視線を感じ、ディアッカは辺りを見回した。イザークも気配を読もうとするが、それらしい人物は見当たらない。 ここは月の都市・コペルニクス。レクイエム爆砕の任を終えたジュール隊は、短いながらの休暇を得ていた。本当はプラントに戻りたい所だが、この後護衛任務が控えているため、月で数日、羽を伸ばすことになったのである。 「気のせいじゃないの?」 「そっかなー……」 シホの言葉に首を傾げながらも、ディアッカ達はその場を後にした。 <あぶない! すっごくあぶない!!> ディアッカ達が通り過ぎるのを店の中から眺めながら、チャンドラは心臓をバクバクさせていた。 生きた心地がしない。 なんせチャンドラは――二年も前のこととはいえ――ディアッカが、どれだけミリアリアを好いていたかを知っている。 しかも彼は、振られた身だ。まだミリアリアへの恋心が、残っていないとも限らない。 いや、そんな話を抜きにしても―― <絶対邪魔される!!> 見つかったら、絶対彼は邪魔してくる。たとえ彼女への想いを断ち切っていたとしても、それだけは断言できよう。 それに、オーブとザフトは敵対関係ではない――とは言え……こんな所で「ザフト」と鉢合わせなど、好ましい状況ではない。 だから自分が、一緒にいるのだ。 <見つからないようにしなくちゃ……> 小物選びに没頭するミリアリアを眺めながら、チャンドラは気合を入れなおした。 「気に入ったの、あった?」 「もう……可愛いのばっかりで、どれにしようか迷っちゃいます!」 「何なら一個、好きなの買ってあげようか?」 「良いんですか?!」 思わぬ申し出に目の色を変えたミリアリアが、悩みに悩んで決めたのは、シンプルな写真立てだった。 包みを大事そうに持って、チャンドラに極上の笑顔を送る。 「ありがとうございます」 「そんな、気にしなくて良いよ。それより次、どこに行く? 何か食べに行く??」 「それも良いですね」 うきうきしながら、二人は店を出た。 そして、足を止めた。 いや――止まってしまった。 目の前にいる三人組を見て。 正確に言うと、右端に見えるディアッカを見て。 |