T


その時二人は、AAの通路を闊歩していた。
先を行くチャンドラ。後を追うミリアリア。
彼女の腕は、チャンドラに捕まっている。
チャンドラに――引っ張られている。

「ね、痛いよ、チャンドラさん!!」
「いいから、こっち!」

何が良いのか――ミリアリアの抗議を、チャンドラは受け入れなかった。というか、鬼のような形相で前を急ぐ彼の耳には、言葉がしっかり届いていないのかもしれない。

目的は一つ。
彼の使命は、たった一つ。
彼女を、ある場所まで連れて行くこと――

「チャンドラさ――」

腕が痛くなり、声を荒げると――同時に、彼の足が止まった。別に、ミリアリアの話を聞き入れようとか、そういうわけではない。

単純に、着いたから。
目当ての場所に。

「ちゃんと、話すんだよ?」

言うとチャンドラは彼女を部屋に押入れ、扉を閉める。
そして、大きく息を吐いた。

心を落ち着けるように。

「……やっぱ、結構キツイかな……」

それでも彼は、放っておけなかった。
今となっては、祈るのみ。
再びこの扉が開かれた時、彼女が満面の笑みで現れることを――

*前次#
戻る0