10 「だから、AAだよ! アークエンジェル!! まだその辺ウロウロしてんだろ? ……や、別に大した用事じゃ……って、いーじゃんか、少しくらい!!」 走りながら、ディアッカは携帯に向かって叫んでいた。 すると受話器の向こうから、それを越える大音量の罵声が響いてくる。 《馬鹿者が!! そんなこと出来るわけ無いだろう! そもそも貴様、停戦やら何やらで忙しいこの時期に、休暇とは何事だ!!》 「だーかーらー、親父に呼び出されたって言っただろ!! なー、頼むよ、会いたい奴がいるんだ」 《会いたい奴??》 「話すだけ! ちょちょいっと通信繋ぐだけで良いから……お前の権限なら出来るだろ? 頼むっ!!」 《……繋ぐだけ、だからな》 仕方なくではあるが、白服の友人は、ディアッカの願いを聞き入れてくれた。 ――ディアッカは、私のことなんか、もう何とも思ってないだろうけど。 私はまだ―― 一度しか目を通していない文面が、頭の中を駆け巡る。 ――ディアッカに今、恋人がいるのは分かってるけど―― 「冗談じゃねえ……」 手紙の中にあった恋人発言――それは、十中八九『シホ』のことだろう。背筋も凍えるような誤解を、そのまま放っておくことは出来ない。 かく言うディアッカも、チャンドラがミリアリアの新恋人と思い違いをしていたわけで。 「……なんか、似たよーな勘違いしてんな」 くくッ、と笑みさえこぼれてくる。 さあ、AAに回線を繋いで、彼女は姿を現すだろうか。 居留守は利かない。月に居たチャンドラとミリアリア、そして停泊していたオーブ船籍・AA。 絶対乗っているだろう。彼女の性格なら、あの戦闘に首を突っ込んでも、おかしいところは何ら無い。 「待ってろよぉ?」 獲物を狙うような瞳に、迷いなんてあるはずもなく。 だって手紙にはちゃんと書いてあった。 ――好き―― ――前よりもっと、ディアッカが好き―― 伝えられた想い。 今度はこちらが、伝える番―― end 結びに一言 これにて(一応)月面終了です。おまけでスペエピに続きます。 |