ファーストキス・物語


大空の下で。
手と手を繋いで。
歩いていたら。
ふと、立ち止まって。

手をひかれて。

「……? どうし――」

振り向いたらそこに、ディアッカの顔があった。
わずか一瞬の隙をつき、彼は自分の鼻先で、ミリアリアの鼻をかすめていく。

触れ合う唇。
どうしたら良いかも分からず、驚きの眼差しで、彼を見続けた。

「……そんなに驚いた?」
「そりゃ――」

顔を少しだけ離したディアッカは、吐息のかかる距離のまま、ミリアリアに目を向けた。
彼女は赤く頬を染め、反論を試みるも――

「あ――そ……当たり前、じゃない……いきなり、その……あんな……」
「初めてだしな」
「――はじめて?!」

ミリアリアは思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。

「ディアッカ、初めてなの?!」
「……お前とは、はじめてだと思うけど」
「ああ、そーゆー意味ね……」
「……てか、その反応どうよ」

キスしたことないはずない――そんな彼女のリアクションに、ディアッカはあからさまに傷ついた。
ミリアリアが自分をどんな目で見ていたのか知って。
結構ショックだ。

「はあ……なんか、緊張感が一気に飛んだわ」
「え? 緊張?? ディアッカが?!」
「……あのさあ、俺だって一応、人間だから……」

うな垂れながらも、彼女の肩は手放さず……逆に、力を込めてしまう。
そこにあるのは願望。
もう一度、触れ合いたいと思う気持ち。

だってこれは、二人にとって初めてのキスで。

肩から、そんな思いを汲み取ったミリアリアは――

「……まったく」
「?」

不思議な言葉に顔を上げると、そこにはミリアリアの瞳があった。
ゆっくり閉じられる海色の瞳。
そして――


from〜ファーストキス・物語〜
結びに一言
12/17UP
頂いた素敵イラストを見て創作本能に火がつき、本能のままに書いた一本(笑)
二人で交わすキスは初めてだから。ファーストキス・物語ってことで。

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