シャチ11


それから、私達は三日に一度。少なくても一週間に一回この場所で落ち合うことをきめた。弥三郎は私と遊びたがったし私はシャチよりも高等な知能を持った彼と話したかった。弥三郎は時々土産、人間の食べ物を持ってきてくれて、その代わりに私は遠くまで泳いで綺麗な珊瑚や貝を弥三郎に持っていった。そこには奇妙な物々交換が成り立っていた。

それが非常に楽しかったのは、言うまでもない。私は弥三郎を背中に乗せたまま海に潜ったり、水族館のイルカのような芸をしてみせたり、色々な事をした。弥三郎は私に習っているのだと言う笛の音を聞かせてくれたり、私が渡した土産でつくった細工を見せてくれたりした。彼は日毎に成長し、私はそれをなんだか親にでもなったかのような気持ちで見ていた。やはり子供は、育つのが早い。

「まだら!」
「きゃぉお!」

きゃー!と歓声を上げて弥三郎が海に飛び込む。出会った当初はかなずちだった彼は、今じゃ私との特訓で簡単に泳ぐことが出来るようになっている。父上に驚かれて誉められた!と頬を染めてにこにこ微笑んでいたのは、まだ記憶に新しい。よじよじと私の背中によじ登ってくる弥三郎を乗せて、私は航海に出掛ける。かもめに餌を投げてやっていた弥三郎が私の頭部を撫でる。

「ねぇまだら、今日は何で遊ぼうか」

そうだなぁ、何をしようか弥三郎。

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