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どこに向かってるのかは知らんけど、二人して無言だった。そらそうだ。別に話すことなんてなにもない。初対面ってわけではないけど・・・ある意味初対面だ。この前店に来たのが初めてぐらいだ。

「・・・・少し、聞いてもいい?」
「うん?」
「つばめちゃんって、前はどこに住んでたの?」
「この町よりずっと田舎の・・・そこで百姓やってたかな」

昔飼ってた狐がいて、そいつがいっぱい毛皮をとってくれたんだ、という俺の話をさすけとやらは黙って聞いていた。きゅろろ、と上空ではいいろが鳴いた。上を見上げると太陽にかぶさるようにはいいろが飛んでいた。力強い翼の音がする。

「俺・・・少し君に聞きたいことがあって」
「わたしに?」
「・・・・この髪の色に、見覚えない?」

ぱちくり、と目を瞬かせる。見覚えもクソも、何の変哲もない黒髪だ。なにを言ってるんだ、といおうとした俺の目の前で、瞬きの合間にどんどん髪の色が変わっていった。濃い黒がだんだんと薄い赤に、薄い赤から紅に。あざやかに。

「・・・・・・、」
「覚えて、ない?」

思わず言葉を失った俺に佐助さんとやらがへにょりと眉を下げた。摩訶不思議な出来事が今起こった。佐助があかいのになってしまった。絶句する俺と、ちょっとおどおどしてるあかいの。はた目から見たらさぞかし滑稽なことだろう。人の気もしらないように羽ばたいて、上空ではいいろが喜ぶような声を上げた。

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