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「あかいのだ」

どっかに行ってしまった赤い毛並みの人の子供だ。ずっと探してた。最近は探してなかったけど、まさかこんなところで出会えるとは思ってなかった。身の中から何かが湧き上がる音がする。俺を起点として突風が吹く。ごう、と草が巻き上がる。あかいのの髪がばさばさと揺れる。

「あかいのだっ!」
「わっ、ちょっ、」
「お前どこに行ってたんだ?俺ずっとさがしたんだ」

ぴょんと跳ねて、それが結構高く飛び上がったものだから少し驚いたけど。その勢いであかいのに抱き着いた。うわっ固い。なんじゃこれは。固いぞ。それにめっちゃ変な匂いする。食ったらいけない草の匂いだ。なにをやってるんだこいつは。

「あかいのだ!はいいろっ、あかいのが戻ってきたぞ!」
「えっ、えええっちょっと」

きゅるるる、と鳴いて灰色が俺の頭にとまった。ちょっと痛いけど別に気にしない。はいいろがあかいのの鼻をがぶがぶ噛んでるのが見えた。はいいろもうれしいみたいだ。ぎゅっとあかいのに抱き着いた腕の力を強めるとおずおずと背中に手が回った。

「・・・・ひ、ひさしぶりです」
「おう!お前が俺たちの前からなんにも言わずに去った時以来だ!何年ぶりかな!」
「ああごめん、心が痛くなってきた」

今日はいい日だ。ずっと昔の友達に出会えるなんて、たぶん人の世でもなかなかないことだ。だって人間はいっぱいいるもの。
あかいのが何をやってるかは知らないが、毒草の香りを吸い込みながら俺は笑った。あかいのもちょっと笑ってた。はいいろにぐりぐりと顔をこすりつけられながら笑ってた。くすぐったかったのかもしれないな。

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