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一歩、駆けるたびに地面が弾ける。どれぐらいの速さで動けてるかわからないけど、周りの人間が動いてる感じ全然しないから、たぶんめっちゃ早いんだ。でもばさらもってるから反動とかは全然来ない。知覚させないうちに殺せるんだもの、この力はちょっと反則かなとは思う。

でも知ってる。俺はわかってる。官兵衛さんは、ついてこれるのだ。だって俺とあんたは同じ力を持ってるんだ。

「っっだぁっ!本気でやりに来てるな、お前さん」
「・・・・・」

一撃目はなーんかやけに頑丈な手枷で防がれた。首を狙えると思った二撃目は鎖で、三撃目はできなかった。視界の端っこで大きく撓んだ鎖と、それからこっちに向かってものすごい音で落ちてくる鉄球の音が聞こえたような気がしたから。

予想通り、俺がいなくなった一瞬後にさっきいたところに大きな鉄球が突き刺さる。風のばさらで音を殺しているのだ。闇もそうだけど、風も暗殺向きだよなぁと思いながら首をひねる。コキ、と音がした。さっきの攻防で一気に肩がこった。官兵衛さんに揉んでほしいなー、あのおっきなてで揉んでほしいなー力入れすぎて時々俺の骨がゴキバキ言うけど、それも好きだったなぁ。

「・・・・・・・・、」

ああいやだ。殺し合いだってのにどうも昔の記憶ばっかり出てくるんだから。
獣になろうとして、歯をむき出しにしようとして、それはできなかった。ひく、と震えた唇からはいつもみたいな唸り声のような笑い声じゃなくて、なにか別のものがでてきそうだったから笑うのはもうそこでやめた。

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