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「・・・・・おとうさん、おかあさん」

あの不思議な味のあめは、暫くフワンテの体に力を与えていた。フワンテは自分で自分に驚きながらも暫く市場の上をふわふわと子供と共にさまよった。でも結局子供の親は見つからなくて、フワンテはそこそこ疲れたので元の場所にゆっくりと降り立った。子供はフワンテの腕をちょっと前みたいにぎゅうぎゅう握りながら、静かに静かに泣いていた。フワンテの頬みたいにまんまるで、それでいて黄色いぱちぱちした生き物と同じ色をしたまっかな頬をつぎつぎに水滴が滑り落ちて行く。乾いた地面にぽつぽつ落ちて、黒いしみを作る様子はまるで雨が降り始まったときに似ているなとフワンテは思ったけれども、今日の空は晴れていて雨は至極局所的なのだった。

でも、それを慰めたくてもフワンテには子供のあの二人の個体を探すのは到底無理なことだったし、そもそもフワンテは自分と違う生き物を慰めたことなんてなかった。真ん丸な目からどんどん溢れだしている水の止め方なんて知らなかった。だからフワンテがとってもとっても考えて、もし、万が一、てか多分殆どありえないことなんだけども自分がこんな風にとっても悲しい気持ちになって、それを晴らす方法があるのかなと考えた時、やっぱりフワンテが取る方法はたった一つなのだ。

「ぷわわー」

あの飴は、まだフワンテの体に力を残していた。というよりフワンテはあの飴を食べてからちょっと体がむずむずしていた。こころの底からうきうきわくわくというか、あのいい感じの風が吹いて自分の体がうまく空に上がっていくときのような、大変な天気の次の日に上空にあがって眺める世界の広さと美しさのような、そんな感じだった。

だからフワンテは思った。子供は喜んでくれるだろうか。世界の広さ、太陽の光をあびてきらきらと光る偉大な湖。濃く茂る広大な樹海、雪が真っ白くつもる神秘的な山。それらが眼下に見える素晴らしい場所を。そうしたら、泣きやんでくれるだろうか。

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