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いちばはフワンテが知らない単語だった。はしゃぐ子供によって時折ぶん回されながらもフワンテはいちばに思いを馳せていた。きっと子供が喜ぶようなものなんだからとっても面白い場所なんだろう。それはどれぐらい素敵な場所なのか、と思ってフワンテは少しウキウキした。まぁ、一番面白いのは空の上に決まってますけども。

だからいちばに着いたぞ、とオスの個体が言ったときフワンテはわくわくして少しきりっとした。二匹の人間はフワンテの様子を見て少し笑ったけど、フワンテはどうして相手がにこにこしたのか分からなくてもう少しきりっとしておいた。子供もぐっとフワンテの腕を握り締めたので、きっと子供もフワンテと同じような気持ちだったのだろう。

でも、結局問題のいちばはたくさんの人間が集まる場所だったので、フワンテは少しがっかりしてちょっぴりヘタレた。それでも初めて見る人間の群れは面白かったし、しらないポケモンも何匹かいたのでそれはそれで楽しめた。フワンテの腕をつかんでいる子供はもう片方の手でメスの個体の手を掴んでいて、はぐれないようにしていた。

「・・・ねぇソラ、モンスターボール、買っていく?」
「うん!・・・・いいの?」
「ええ、いいわよ」

二匹はなにやらもんすたーぼーるという赤と白の球体を買っていた。フワンテはそれをぼんやり見つめながらあれに似てるなと思った。びりびり光る、なんか丸くてあんな感じの色でとてもすばしっこい奴だ。一回風のせいであいつらの群れの真ん中に落ちてしまって、フワンテはとても痛い目に会ったことがあった。

でも、このボールはいくらかあいつらより小さいし、動かないなと思ってフワンテは安心することにした。なんのためにそれを買うのか分からないが、二匹はフワンテをちらちら見てにこにこと笑ったので自分のための何かかな?とフワンテは思った。でもあれを貰ってもどうすればいいのか分からないので、もしそれが本当にフワンテのためのものだったらとりあえずどこかに捨てておこうとも思った。きっとそのうち土に返るはずだ。

あとはフワンテも知っている甘かったり酸っぱかったりめっちゃ苦かったりする木の実を幾つか買ったり、フワンテがしらない葉っぱを買ったりして二匹はいちばで楽しんでいるようだった。ちなみにオスの個体は途中でどこかに行ってしまったので、フワンテは子供にはああ言ったくせにと心の中で密かに蔑んでおいた。何故口に出して言わないのかというととても怖いからである。フワンテは地味に臆病だった。

、と大体途中まではいちばでの買い物は十分上手くいっていた。子供が母親の手を離してしまって、フワンテと一緒に迷子になるという事件が起きなければ。

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