サヨナラ18


奥でたたずんでいたジムリーダーのタケシの手持ちはゲームと変わらずイワークとイシツブテだった。初手のイシツブテをヒトカゲのメタルクローで倒すまでは簡単で、問題はイワークだ。こいつ地味に早くてそれでいてかなり堅いからな。

「ポッポ!すなかけだ!」

ポッポが放ったすなかけが上手くイワークの目に入って視界を制限させる。ここまでは予想通りだ。ゲーム通りと言っても良い。問題はここがポケモンが普通に生きていて、動く世界だってこと。

「・・・・・いいか、ヒトカゲ。今イワークに近付いたら大ダメージをうける。それは分かるだろ」

目に入った砂が痛いのだろう。うなり声を上げてバトルフィールドでイワークが暴れまわる。ただでさえ大きな体、それがそこそこの早さで動いているのだ。触れるだけでヒトカゲの小さな体は吹っ飛んでしまうだろう。ひこうタイプのポッポなんて論外だ。

「だから、いいか。イワークの動きが収まったら、」

イワークは岩蛇ポケモンだ。蛇に手足はない。イワークもそれは同様で、奴に足と呼べる部位は存在しない。でも、奴が動く時、特に力を込める場所がある。それはきっと、岩で出来ているからこその脆い弱点。

「尻尾から数えて3番目、頭から数えて4番目だ」

わかるか、とヒトカゲに指図をする。あの、妙にすり減っている部分。そこにメタルクローで傷をつければ大分すばやさが下がるはずだ。いくら体が岩だからって、痛みを感じないわけじゃない。

「・・・・いけっ!ヒトカゲ!メタルクロー!!」

イワークの動きがだんだん静まってきた時を見計らってヒトカゲに支持を出す。爪を鋼色に硬化させたヒトカゲがバトルフィールドに飛び出して、支持した場所を狙う。思い切り振りおろした爪が鈍い銀色の軌跡を書いて、その場所にヒットする。一旦動きが止まっていたイワークが新たな痛みに驚いたのか、天を仰いで耳をつんざくような鳴き声を上げた。

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