サヨナラ17


ジムの作りはゲームと殆どかわっていない。唯一違うところがあるとすれば、ゲームの場合はジムトレーナーを避けて通れたが、今回はしっかりバトルしなければならないことだろうか。

「サンド!ひっかく!」
「ヒトカゲ、ひのこだ!」

いわタイプのジムなんだから頼むからじめんタイプなんて出さないでくれ、と思いながらもヒトカゲとポッポに指示をだし、とくぼうととくこうの差を利用して上手く相手のポケモンを倒していく。ヒトカゲが口から吐き出した火の玉に当たったサンドが、技を繰り出す前にきゅうと一声鳴いて地に倒れ伏したのを確認して、俺は安堵の溜息をついた。

「お前強いな、ほのおタイプとひこうタイプだけで俺を倒すなんて」
「おう、もっと褒めろ」
「・・・・・タケシさんにこてんぱんにやられちまえ」
「んだとこら!」

手持ちのポケモンを一旦ボールへと戻し、ニビジム唯一のジムトレーナーであるキャンプボーイのヨシヒコと互いの健闘をたたえて握手、がリアルファイトに発展しそうな所で審判に止められた。半分じゃれあいみたいなもんだったんだけど、二人揃って軽く叱られる。

「がんばれよ、負けたら笑ってやるから」
「ジムバッチ、見せびらかしてやるよ」

あのおっさんちょっと厳しいんだよな、と審判に見えないようにべろをだしたヨシヒコに笑って、先ほどの握手のかわりに拳を軽く打ち合わせて先へ進む。岩で仕切られたこの空間の奥で待つのはジムリーダー。なんとなく感じる威圧感に、緊張を紛らわすように軽く唇を舐める。負けるものかと先ほど打ちつけ合った拳を握れば、腰につけた二つのモンスターボールがそれに呼応するようにかたりと揺れた。

prev next

[back]