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一瞬、へぇーとおもった。それから本気で首をかしげて、腕を組んだ。隠してきたつもりなんだけどなーちょっと理解できなかったな。こいつの力って人の心までわかっちゃうの?すごくびっくりしたからもう一回言ってくれてもいいんだぞ。うん。

「……こう言いましたけど、わたし、人の心まではわかりません」
「………」
「私はただ、人よりも先の事が見えるだけで……」

だから、と言った後鶴姫は少し黙って、うろうろとあちらこちらに目線をさまよわせた。そんなに俺に何かを言うことが怖いのだろうか。話が話だからそんなにいらいらはしないけど、少し焦らされてる気分になる。

「ごめんなさい。私、こうして力を自分のために使うことが、あんまりなくて……少し緊張してしまいます」
「………」
「でも、言います。言っちゃいます。あのですね、小太郎さん。関ヶ原はたくさんの未来に分かれていたのです」
「………、」
「例えば北条のおじさまのところに暗のおじさんが来た時、あれも分岐の一つでした。あのまま北条が暗のおじさんと進む道をとっていたら……それはまた別の未来となったでしょう。寧ろあなたが望む未来に近いかもしれません」

私がこうして話をしない未来。徳川が天下を取る未来。豊臣が、毛利が、伊達が、武田が、石田が……。恐らくもう起きえないのだろう未来を鶴姫は語った。まるで夢物語のようだと思う。意訳ではあるけど、俺とじいちゃんとかんべえさんがあのまま過ごす未来があったとか言われたらさぁ…………やっぱ今からでも徳川あたりを殺したくなるよねぇ。いや、俺あいつほんと嫌いなんだよ。

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