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それから少しして、また戦があった。あの斧をねだった忍びも駆り出したから、生きていたら声をかけようと思って下っ端の忍びが入れられている忍び小屋の方へ足を向ける。あたって砕けるだけが仕事の、使い捨ての生き物がもし、また生き延びていたら。それは使えるってことだ。

「長」
「なぁ、斧持ったちっこいのいる?」
「名前ならそこに」

どうかなさったので、と問われたのにちょっとねと手を降って、小屋の隅っこでうずくまっている名前とやらのそばに行く。

「生き残ったんだな」
「…………あ、」
「今回は何人殺した?」
「言わなきゃ駄目ですか?」
「うん、駄目」
「…………今回はちゃんと数えてたんですよ」

16人殺しました、と言って立ち上がり、名前は片手に握っていた斧を俺に見せた。ちゃんと血脂も落として綺麗にはしてあるけれど、その刃はぼろぼろに欠けていた。

「嘘じゃないみたいだね」
「嘘ついたってしょうがないです………あの、これの代わりの斧ってもらえますか」
「いいよ、貰ってきてやる」
「ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げたのにひらひらと手を降って、ぼろぼろになった斧を預かって外に出る。おやそれは、と先ほど俺に声をかけてきた忍びが声をあげたので、丁度いいところにと命令する。

「なあ、あいつ、もう少しいいとこに移しておいて」
「………はっ」

その後すぐに忍び小屋からあがった驚いたような声を聞きながら鍛冶場に向かって歩く。この斧はもう溶かして別のものにするしかないからだ。

「やーいい買いもんしたわ」

くるくると手のひらで斧を回す。あいつはこれで16人殺したと言っていた。

「薪も割れないなまくらだったってのに」

でもその言葉が嘘じゃないのは、柄に染み付いて取れない血がちゃんと物語っている。

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