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もともと忍びってのはかなり消費が激しいものだ。あぶれ者とか、要らなくなったのとか、そういうものを有効活用しているんだ、と言っていたのは里のなんて奴だったか。まぁとにかく、望まれて生まれたわけじゃない人間ってのは案外この世の中には多いってこと。

そしてそれはふるいにかけられて、使えるやつだけ生き残る。そういうことだ。畜生だって、弱い子は迷わず切り捨てる。その点人間様は偉い。ゴミみたいな子供だってちゃんと育ててやってるもんな。

「お前みたいな優良物件売っちまうなんて、お前の親は勿体無いことしたなぁと思って」
「はあ」
「自分でもそう思わない?」
「まぁ、俺だって売られたくはなかったですけど………ってか、なんで長は俺に構うんですか」
「ん?唾つけてんの」
「つば……」

忍びにだって、鍛錬の時間はある。期待の新人の調子はどうかなと思って見に行くと、忍刀や暗器を振る忍びたちに混じって一人だけ、斧を振るっているのが見えた。しかもそれがまた妙に様になっていて、面白い。

だから近くによって行って、無言でその様子を見ていたらなんですか、とやけに嫌そうに言われたのでちょっと話をした。この名前という忍びは良くも悪くも目上の者に媚びないのだろう。

それは女の子に言うことじゃ、と幼い顔を顰めたのに、そばに近づいて忍びも人間なのだと耳元で囁く。

「使えるやつ潰されちゃたまんないんだよ」
「………、っ」

先程からどうも動きが鈍い左腕を捕える。僅かに顔をしかめたのを見て、着物の袖を捲り上げるとやっぱりそこには赤黒い打撲痕。誰がやったのか、なんて馬鹿なことはここじゃ聞かないけれど、まぁなんとなくわかる。後ろで動揺したような気配がするから。

「さっきから気になってたんだよねぇ……これ、どうした?」
「あ、その、これは先日、転んで……」
「ふーん」

転んで、ねぇ。と呟くと名前の体が少しだけ揺れた。明らか腹のほうも庇ってるから勿論嘘なのは分かってる。嘘をついてもしょうがないのに、と思いながらとらえたままの左腕をひっぱって歩き出す。後ろから聞こえるあわてたような声は聞かないことにした。

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