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つい先日入ったばかりの、忍びとは思えないような性格をした幼い忍びが刀は駄目だ、どうも駄目だとぼやいていたのでじゃあ何が良いのか訪ねてみた。まさか俺に聞かれているとは思わなかったのか、その忍びはぱちりと目を瞬かせて一瞬だけ驚いた顔をした。

「あ、えっとあの、俺は農民上がりなんですよ」
「ふぅん」
「なまじ運動神経が………いや身のこなしが良いばっかりに少し前に親に売られてしまいまして。なので刀は、使ったことがなかったんです」

いやはやしかし、売られた時には驚いた。と全く表情を変えずに言ってのけて、そいつは俺に向かって手のひらを差し出した。

「なに?」
「俺の愚痴、聞いてましたよね」
「ああ、うん」
「そんなら、刀じゃない武器をくださいませんか」

俺は入ったばかりの戦忍なので暗器を持っていないのです、と腰の刀をかちゃりと鳴らしてねだるのに、何人切ったのかと尋ねた。

「それは答えなきゃいけないんですかね」
「そうだね、返事によっちゃ希望に答える。もちろん程度はあるけど」
「……両手から先は覚えてません。ただ、」

あえて言うなら同期は殆ど死にましたというから、そりゃあそうだろうなぁと思って何がいいのかと聞いた。いいんですね、と俺に一度念を押して、そいつは斧がいいと答えた。

「斧、ねぇ」
「家での薪割りは俺の仕事だったんですよ」
「そう」

でも、今まで切ってたのは薪だろうというと俺の胸のとこあたりまでしかない小さな忍びは薪より人のほうが脆いですよと言って少しひしゃげたような顔をした。


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