後日譚2


しばらく一人と一匹、見つめ合っていたがそんなことをしていても何も進まないことに気づき、佐助を呼んでぽちを見せた。奴は目を白黒させて俺とぽちとを交互に見ていたが、ぽちがくるくると喉を鳴らすとああと声をあげて頭を抱えた。

「なんで人の形してんの……しかもあの肉塊消えてる。旦那、何かした?」
「いや、ぽちが食ったのだと思う」

上半身を起こし、まだ俺の腹の上に乗ったままのぽちを抱き上げる。その体はぐにゃぐにゃとしていたが、女というものは男よりは柔らかいものだからしょうがな……いや違う。こいつ、肋がない。

「……とりあえず、服を用意してくれ。適当なもので良い」
「ああ、うん。了解」

おとなしく俺の腕に抱かれているぽちを、少し目を細めて睨んだあとに佐助はそこから姿を消した。それに驚いたようにぱちぱちと目を瞬かせているのに少し笑って、もう一度その脇腹を触る。普通ならばそこにあるべきものがない、というのはどうも不思議な心地になるものだ。

「ぽち」
「………?」
「お前が人になるのであれば、ここにはしっかりとした肋がなくてはならぬのだ」
「る、るる……」

着物をすこしはだけて、脇腹を触らせる。ぺたぺたと俺の腹を撫でていたぽちは、それを理解したような顔をして得意げに背中から大量の骨を生やした。いくつもの尖った骨が肉をみちみちと突き破る瞬間を間近で目にして思わず絶句した俺の代わりに、丁度服を持って帰ってきた佐助がうわぁと声を上げた。

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