後日譚1


最初は、小さな鼠ほどの大きさだった。生まれてから2、3日は少なくともそうだった。飯を与えてみても興味を示さず、ただ自分がはい出てきた殻、つまり肉塊の周りを転がったり上に登ったりとなにやらうろちょろしていた。

「……………」
「……………」

あの中にいた時からこいつは賢かった。少なくとも俺や佐助の言葉には答えていた。だから放っておいたのだ。なにか考えがあるのだろうと思って。

「…………お前、ぽちか」

ある朝、腹あたりの重みに目覚めるとと布団の上にちょこんと素っ裸の幼児が座っていた。頭をもたげ、まずそのさまざまな色をぐちゃまぜにしたような頭髪を確認し、次いで下腹部を確認する。ない。女子だ。

布団の上に童女を座らせたまま、念の為昨日までうろうろしていた肉塊の周りを確認しようと頭上に目をやる。あの塊が忽然と消えていた。

「……………」
「……もしや、食ったのか?」

きょろんとしたまん丸い瞳でこちらをずっと見つめている童女にそう声をかける。童女は少し首を傾げたあと、ちゅんちゅんと甲高い音でそれに答えた。どうやら人の言葉は使えぬらしい。

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