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ちなみに婆娑羅者にはそれぞれ性に合う武器が存在している。たとえば以前の私、毛利元就だったらプラフープのような輪刀。あれはどうも他の武器がしっくりこなかったのでわざわざ鍛冶師に作らせた。あの武器が出来る前は、確か采配を使っていたのだっけ。それも特注だった。今思うとやけに金のかかる武具を使っていたな。

今回の私がこれだ、と思ったのは薙刀だった。上記二つに比べれば安上がりな方だ。ただ、それを逆刃にしてもらった。これにはある考えがある。先日天井を壊したあの薙刀の使い方、あれがなんだかしっくりと来たのだ。

だから殺傷能力を高めるために薙刀を特注で作ってもらった。特注と言っても、薙刀の刃の部分を追加でつけてもらっただけだからそんな大したものじゃない。金属が増えた分、ずっしりと重いそれをくるくると頭上で回してみる。ぶぉん、と風を切る大きな音がした。

「………うん」

思った通りだ、自分に合う武器だからか以前より滑らかに婆娑羅が乗る。一刻ほどそのまま鍛練をしてから風をまとって心なしかきらきらと光っている薙刀を撫で、今日はもういいだろうと部屋から出る。そうして自分の部屋に戻る途中で、上の姉を一人見かけた。

遠目にしか見えないが、あれは、なんだろう。庭で女中たちと遊んでいるのだろうか。

「………………」

姉は、何人かいる姉達は、婆娑羅をもっていない。だから薙刀を振るう必要はない。柴田はそれなりの武家だから、婚姻のあてならいくらでもある。だから稽古なんてしなくてもいい。それが少し羨ましかった。実際それを目にすると、ますます強くそう思った。

手の中の薙刀を強く握り締める。姉が羨ましい。私は人を切ったことがある。私は戦場を知っている。手の中の刃物が肉を裂くその感触も、臓物の匂いも人の断末魔の叫びも腹の中が何色なのかも脂肪の色も頭蓋の中身も知っている。姉が羨ましい。私は何も知らないただの子供になりたかった。


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