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生まれ変わったわたしはなんとまた武士の子供として生まれていた。柴田勝義の子、柴田ナマエ。それが今回の私の名である。

「かあさま」
「なぁに?」
「あの、わたしのまわりで、くるくるとかぜがまわるのです」

私がそれに気がついたのは、生まれて10年ほど生きたある日の朝のこと。丁度冬が開けて、春一番が吹きあれる頃の話だった。

私の意思一つで身の回りをうず巻く小さな竜巻は、昔見た風の婆娑羅によく似ていた。もしや、と思い母に訪ねてみれば返ってきた感情は恐れではなく喜び。婆娑羅を覚醒させたのね!と抱きかかえられて頬擦りされて、白粉の匂いに辟易としながらまたあの世界かと項垂れた。

婆娑羅が発現したからって、全然嬉しくない。婆娑羅者はつまりは人の外。幼子だろうが成人男性以上の筋力を見せるし、一騎当千の力を持つ。これはすべて本当のことだ。

毛利元就だった時に出会った幼い農民の娘のことを思い出してため息をつく。女だからと少し油断していたのが不味かった。政治の道具になるのは覚悟していたが、これは戦の道具にもなるかもしれない。

体の周りをくるくると回る竜巻を掬い、手のひらで弄びながら空を見上げる。日輪は今日も空の上で気高く輝いていた。これだけはどこで生まれても全く変わらないなと思った。


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