拾弐
海のプール。わたしはぐるぐるとまわる。もう痛みはない。てもあしもあたまもある。だってたくさんたべたから。
「………動かないな」
「でも死んではないよ」
そとからきこえるこえにみみをかたむける。ずっときこえていたこえ。かたほうはおとこのひと、もうかたほうもおとこのひと。ママ?
「もう四日もこのままだ」
「中から聞こえる音は元気だけどねぇ」
だれだろうだれだろうだれだろう……。ずっとそだててくれたひと。おいしいごはんをくれたひと。
「…………」
「あんまり気にかけないほうがいいよ、旦那」
くるくると声をあげる。わたしはここにいます。げんきです。このぷーるはとってもきもちいいから、しばらくここでたゆたっていたかったのです。おなかもいっぱいで、てんちをかける記憶をみてた。みずのなかにもつちのなかにももぐっていた。
でも、そうね。そろそろ、ほんもののおそとにでよう。
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