料理の話


時系列は佐助サイド、ゆきさも好き あたりの話です。
判定は小十郎と佐助で、結果は勿論引き分け



伊達政宗が料理好きだという話は前世でも聞いたことがあった。仙台名物ずんだ餅やその他の料理に関する逸話。それを耳にしたときは男なのに面白い武将だなと思った記憶がある。

だが、明らかに前世の戦国時代とは違うこの時代。六爪流にバトルジャンキー、おまけに西洋かぶれの伊達政宗が、まさか前世の伊達政宗と同じように料理が趣味だとは思わなかった。

「真田、お前だったらここに何を入れる?」
「……ふむ」

奥州に着くなり強引に引きずり込まれた厨。どこで聞いたかしらないが、私が料理が出来ると知った好敵手様は今日は料理での勝負をお望みのようだ。

その右手に巻かれた包帯をちらりと見て、彼の手元を覗きこむ。そこに広げてあるのは南蛮料理のレシピ。どうやらパイを作りたいらしいが。

「これは……?」
「Aa、南蛮菓子の一種だ」
「ほお」

小麦を粉にして、バター…牛の乳から出来るコクのある塊を混ぜて練り、それを焼いて……と説明してくれるのを半分聞き流しながらそのレシピをこっそり読む。どうやらベリー系のパイのようだ。

「それでな、こいつはraspberryやstrawberry……つまり木苺を使った食い物なわけだ」
「美味そうでござるな」
「だがこの季節じゃそんなもの、実を付けているはずがねぇ。よって他のもので代用したいんだが…」

そこでお前の案を採用だ。と来たものだ。この時代に男、それも武将同士でする会話じゃないなと思いながら頭の中で前世食べたパイの名前を思い浮かべる。アップルパイ、チェリーパイ、クリームチーズがたくさん入ったブルーベリーパイ、……。

「そうですな……季節を問わず作れる南蛮菓子を、某一つ知っておりまして」
「なんてやつだ?」
「確か、かすたあどくりいむと」

鶏の卵黄、砂糖、牛乳、そして小麦粉があればなんとなく形になって、そこそこ美味しいクリーム。その作り方を、南蛮人から習ったのだという事にして独眼竜に教える。

「creamねぇ……」
「中々美味でしたぞ。先ほど教え下さったぱいの調理法はどうやら麺麭のそれと似ている様子。ならば合わぬことは無いかと思いますな」
「ふぅん」

ならそれにするか、と腕まくりを始めた独眼竜に、ひとつ気になることを問いかける。

「某と貴殿でぱいを作るのでござるな?」
「そうだ。あんたの腕前がどれだけかは知らねぇが、cook……料理人が二人居りゃあまず失敗はねぇだろう」
「そうですな。しかし、勝負は」
「pieはdessert、食後の菓子だ。作るのは料理の後。だからあんたとの勝負はこれからってわけ」

あんたの腕前、楽しみにしてるぜと独眼竜が私の背後を指さす。振り向いてみるとそこには様々な、しかも大量の材料があって、ああこれはいろんなものを散々作らされるんだろうなとそんな覚悟をした。なんだあのでかいカジキマグロ。どうやって獲ったんだ。

「Let,s partyだ!真田幸村!」
「望むところ!」

ええいままよと同時に駈け出して、手当り次第材料を引っ掴む。本当は思いっきり体を動かしたかったんだけど、相手が怪我をしてちゃあしょうがない。こうなったら前世の手練手管を使って、負かしてやるぞ独眼竜!

prev next

[back]