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一応ここにも表記しておきます。夢主ちゃんはタイトル通りの悪魔?でそれなりのクソ女です。




「お前はいい匂いがする」

昔から何かに付きまとわれている。それは実態がない何かだ。女人の形をした、得体のしれない生物だ。ナマエと言う名を持つらしいが、自分はそれを信じていない。

「・・・・・ワシは先ほど湯浴みをしたぞ」
「知ってるよ、見てたもの」
「・・・・・・・・」

堂々とのぞき見をされていたことに対してはもう文句も言わない。こいつは壁をすり抜ける、空中に浮く、夢の中に潜り込んでくる。つまりは妖怪の類だ。しかし妖怪を払うとされている念仏もまったく効果がないところをみると、きっと人間ではどうしようもなくおっかないやつに違いないと、自分はそう踏んでいる。

「一番はじめに、お前を見つけておいてよかった」
「・・・・・・何度も聞くが、それはどういう意味だ?」
「ふふ、秘密、秘密」

どんだけ問われたって教えてあげない、とナマエは壁をすり抜けどこかに消えてしまった。ナマエが自分から良い匂いがすると言うのが恐ろしくて、出会い初めは自分の魂を食うのか、それとも肉を食うのか、などと様々な事を尋ねたが、答えはどれも否だった。ならば自分からは、一体どのような匂いがしているのか。ナマエが舌舐めずりをしているのを何度か見た事があるから、きっとそれは食欲を誘うようなものなのだろう。

湯浴みをしたのだから、もう余計な匂いはついていないはずだ。それでも気になってなんとなく自分の腕を嗅いでみる。ナマエが言う匂いの意味は、やっぱりわからなかった。


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