参


朝起きると自室に人間の頭ほどの大きさを持つ肉塊が鎮座していた。いかにも「さっきそこに置きました」と言わんばかりの瑞々しさ、光を反射しててらてらと光るその生々しさに思わず目をこすり、佐助を呼んだのはいいが奴もわからぬと言う始末。佐助の目を掻い潜って俺の部屋にこんなモノを置くとは、余程の手練かそれとも阿呆か。

「…………しかし、まこと、面妖な物だな」

佐助を食うとは、ともうぴくりともしなくなったその肉塊に話しかける。そう、こいつは動くのだ。わずかにだがその、体液でてらてら光る表面をざわざわと動かし、生きているのだという事を主張する肉塊。人を食べる、得体のしれないナニカ。

「……お前に、餌を与え続けたらどうなるのだ?」

ただその体積を増やすのか、それともまた別の何かに進化するのか。
少しそれが気になって、指先で目の前の肉塊をつつく。僅かに伝わる熱。ぶにぶにと揺れるそれを眺め、指の先を見る。

「爪も食らうか」

わずかに溶けていた爪の先。佐助の手甲が溶けていなかったことを考えると恐らく食うのは生き物のみ。厨に置いた鼠取りに、鼠がかかっていただろうかと思いながら立ち上がる。

暫く大きな戦もない。この暇な時間をどうしようかと思っていたが、中々いい暇つぶしができた。


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