つーみっ!つーみっ!


大将首をひっさげたまま、やっぱり凪いだ瞳で主はどうという事はなかったとそう俺に告げた。ああ、やっぱり、俺達はどこかが壊れているのだろうか。

「それ、お手柄だったね」
「運が良かったのだ、突き進んでいたら偶然、な」
「まぁ、運も実力のうちってことで」

初陣でこんな成果を挙げられる奴は早々いないよ、と肩を叩く。するとびく、とやけに大げさに反応するのになんだ、と顔を覗きこむとごうごうと燃える瞳とぶつかった。おかしい、さっきまであんなに静かだったのに。

「さ、さわるなよ」
「なんでさ」
「心はそうでもないが、体はまだ殺気立っているのだ。だから不用意に触るでない」
「ああ」

よくあることだよ、とわざと背中をバシバシたたく。そのたんびにびくびくと大げさに震える体も、何回かそうしているうちにだんだん収まってきた。やめろ、と怒るように言う声にも
余裕が出始めている。

「ほら、ちょっとましになった?」
「あ、ああ………」

佐助はすごいな、とどこか感嘆したようにそう呟くのに、俺もそうだったからと告白する。あの時はたしか里のやつをいくらか殺してしまった。たしか、そうだ。しばらく闇が暴れて止まらなかった記憶がある。

「佐助もそうだったのか」
「まね、それより炎の様子はどう?噴き出るなんてことはない?」
「ない、おそらくな」
「そうか、ならいい」

帰ろう、と手を差し出すと彼は案外素直に掌の上に手を載せてきた。きゅ、と子供のように手を繋いで本陣の方へ歩き出す。

「あっちにいったらはなすから」
「うん、さすけ」
「何?」
「帰ったら団子を食いに行こう」
「いいよ」

二人共もう片方の手には物騒な物を抱えてるのに、なんて話をしてるんだろうか。駄目だなぁ俺達は、と思いながら血と炭となにかにまみれた水分の多い大地を歩く。一歩足を進めれば必ず柔らかいものに触れるので早くここから抜け出したいと思った。


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