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そこから先の事はあんまり覚えていない。ただなーんとなく、偶に水を飲ませてもらったりとかなんかへんな多分薬っぽい苦いものを飲まされたりとか、あと汗を拭ってもらったりとか、それからトイレは自分でいくと言い張った記憶がある。その他は朧げだ。何日間か知らないが、ずっと寝ていたんだろう。

「知らない天井だ」

ふと意識を覚醒させると、世界が違って見えた。まぁ、実際知らない場所なのだけども。
いつも見ていた天井とは少し違う、もうちょっと良い所なんだろうと察せられる感じの作りをしばらくぼんやり眺めたあと、私はゆっくりと体を起こした。うむ、頭が痛くなることも体がだるくて布団で寝ていたいという誘惑もさほど強くない。気分爽快、とまではいかなくても体調は随分良くなったらしい。

「ここはどこなんだろう」

寝ていた場所をぐるりと見渡して、ここが一軒家だということを確認する。うっすらとではあるが、なんか知ってるような知らないような男の人がなんか、あそこじゃダメだから他のとこに行く的な?背中に背負ってジェットコースター?なんか空も飛んでたような気がする。ううん、記憶が混濁している。

ぐむむと腕を組んで唸り、うすぼんやりとした記憶をたどってみるも元々が熱に浮かされ、そうはっきりしているものではないためすぐに薄れてしまった。思い出そうとすればするほど曖昧になっていくアレだ。年かな、と思いつつもそもそと布団から這い出る。急に立ち上がってもめまいがするだけだということは分かっているので、赤ん坊のように四つん這いで小屋の隅まで這っていき、そこで壁に手をついてゆっくりと立ち上がった。

「・・・・・・うん、平気だ」

ちょっとよろめきつつもなんとか二本の足で立つ。壁沿いに外へとつながる扉へたどり着き、開ける。さんさんと輝く日光に、光になれない目を細めながらも裸足で地面を踏む。

「うーーーーんこれは」

昨日雨が降ったのか、かなり湿っていたのでものすごく気持ちが悪かった。

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