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猿は、いや、佐助さんはいつもならだいたい現れる周期を越えても来なかった。仕事が忙しいのだろうか、それとも私に幻滅したのだろうか。

「んん、」

布団から起き上がって、ふうとためいきをつく。ほんとに最近溜息ばっかだ。駄目だ、こうして溜息ばっかりついてると幸せが逃げるって言うじゃないか。ん、はて?幸せとは。

「・・・・・ひよこ」

ああ、なんだか体が重い。病は気からというのは本当の事なのだ。明日英語の小テストがあるから行きたくないなぁと思ってうじうじしていたら本当に風邪を引いたことだってあるのだ私は。

ずりずりと鉛を飲んだかのように重いからだをひきずって、小さな籠のなかで元気にぴよぴよと鳴いているひよこの元にいく。ぱらぱらと雑穀を巻いてやるとひよこは喜んでそれを食べた。本当は外で餌を食べさせたいのだけど、ちょっと今日は無理だ。そんな元気がない。川で水をくんで、それで畑の野菜にまくこともしなきゃいけないんだけど、それはもう少し。あと一眠りしてからでいいや。

「・・・・・・帰りたいな」

ふわふわの小さな頭を指の腹で撫でながら、熱く鈍る思考の中で、私はぼんやりとそんな事をつぶやいた。呟いてしまった。思いのほか小屋のなかに響いたその言葉に、は、と自分の両手で頬を押さえて俯く。ああ、駄目だ。駄目だからだが弱るのは。だってこうしてこころもいっしょに弱くなるのだから。

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