おれ、犬9


ひゃっほー!おれ、いぬ!きょうはゆきがふった!ゆきをみるのはひさしぶりだ!おれ、雪だーいすき!

「……わんこ?」
「わふっ?」

ねこはこたつで丸くなるかもしれないけど、おれはいぬだから外で遊ぶぜ!ごろごろころがっちゃうぜ!イェーイ!
そんなことしてたら人間とであった。ちっちゃな女の子だ。白いかみのけ、きれーだな。ゆきうさぎみたい。

「あのな、あのな、わんこ。ここらへんはな、そろそろ危なくなるから……だから、来ちゃだめだべ」
「………きゅうん?」

ひとしきりいっしょにあそんだあと、おんなのこはそんなことをおれにいってきた。危なくなるってなんだ?なにかあるのか?おれがくびをかしげるとおんなのこはぎゅーって、おれを抱き締めてきた。

「おらたちは……おさむらいに抗議するんだべ。お前たちにわたすこめはねぇってな。だから、危ないだよ」
「わふ……」

一揆か。もしかして、一揆するのか。お前ら。
喋らない犬の俺にひとしきり不安やいろんなことをぶちまけたあと、女の子は寒さでぱりばりにかわいた涙をぬぐって去っていった。いつきちゃん、と誰かが誰かを呼ぶ声がどこか遠くから聞こえてくる。

「……………」

俺は自分の牙の研がれ具合を確認してわふ、と息を吐いた。今日はここでおしまい。

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