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一口大に丸めた団子を沸かした湯に沈めると、暫くして茹だったあたりでぷかぷか上に浮いてくる。俺は何気にこの様子を見るのが好きだ。出来たての団子はつるつるしていて、それでいてふわふわしていてとてもかわいらしい。

「つばめ、ほら店あけるから」
「はーい」

そうして団子を量産する父親の隣でそれをじっと見つめていると、餡を練っていた母親が俺のことをそうせかしてきた。その母親の隣では先日4歳になったばかりの弟が、母の着物のすそを掴んでじっと俺の事をみている。こいつはどうも俺のことを妙に怖がる節があるのが少し悲しい。

「姉ちゃんはお前のこと、とって食ったりしないぞ」
「・・・・・・」

そう言って頭を撫でると、嬉しそうな顔をしながらもちょっと身をすくませた。表情と行動が合ってないなぁと思いながら支度を済ませる。この子は特に、目を怖がるのだ。顔は見てくれるしふれあっても嫌がらないが、目だけは絶対に俺と合わせようとしない。そもそも俺は何故か年下の子供からは好かれない性質なのだけど・・・・・・そんなに怖い目をしているのだろうか。

「つばめちゃん、みたらし二つくれるかい」
「はぁい」

店をあけるとともに、さっそく暖簾をくぐって入ってきた男の注文をうけ、団子を二つ取りに厨に戻る。丁度甘いタレを団子につけて、炭火であぶっていた母に注文の事を言っておいて俺は茶を淹れる。そろそろ寒くなってきたし、今日は暖かいのにしておくべきだろう。

「おまたせしました」
「ありがとう」

二つのみたらし団子と一杯の茶を男に渡し、その次に店に入ってきた客の注文を受ける。今日も、忙しい日になりそうだ。

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