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ごとり、と猿が何かを自分の隣に置く。黒い物体。ごつごつした金属の塊。これがてこうっていうやつか。しかし手の様子は全く変わらなかった。

「・・・・・・・・・・・ぬくい」

猿の、手甲をはずしてあるらしいほうの手を握る。それはたしかな温度を私の掌に伝えて来た。先ほどまで金属に包まれていたからかすこし冷たい、けど温いといっていい温度。生き物の手だなと改めて感じる。何故疑問に思わなかった?違和感バリバリだろ自分。

「でも、相変わらず私には猿に見える・・・・。ごめんなさい、気分のいいものじゃないよね」

猿飛佐助が猿にしか見えないってのは、ちょっと失礼すぎるにもほどがある。申し訳なさに俯く私に猿が何かを言う。猿の鳴き声にしかきこえないそれは本当はちゃんとした言葉なのだろう。頼む脳みそよ日本語に変換してくれ。頭を打った記憶はない。

「・・・・・・何?」
「きにするな、だってさ」
「うう・・・・」

猿は、いや猿飛佐助さんは非常に寛大な心をもっていた。がんばってこの暗示かなんかをなくして見せます、と頭を下げる。猿はちょっと困ったようにききっと鳴いた。感情はなんとなくわかるのになぁと私は思った。

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