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理由を考えてみてもさっぱりだ。だって慶次はちゃんと人間にみえる。でも慶次は猿が猿飛佐助という人間だと言う。町でも、人間が猿に見えることは無かった。猿回しのおっちゃんならいたが。

「ナマエさんは、違和感とかなかった?」
「違和感・・・・・」

うーん、と視線を宙に彷徨わせる。違和感、違和感。頭がやけにいいとおもっていた。人間臭いしぐさをするとおもっていた。あとは、

「手が、冷たい」
「手が?」
「その・・・・・金属とか、石みたいに」

私が言ったその言葉に、慶次は驚いたように目をむいた。猿をちらりとみて、手、ねぇと呟く。首をかしげた私になんでもないといって慶次は手をふったが、その目の奥には隠せない笑いが存在していた。そんな不思議な慶次に猿がなにやら吠える。

「ごめんごめん、いやぁ・・・・・手ね、うん。あのね冷たいのは確かなんだよナマエさん。この人手甲ってやつを腕につけてるから」
「てこう?」
「うん。金属でできた防具なんだけどね、だから冷たいのも当り前さ」
「なるほど」

その毛皮は実は金属かと猿の手をみる。うーむ全然わからない。やっぱり私にはただの猿の手にみえる。

「・・・・・・さわっていい?」

猿は一瞬戸惑ったように見えた。慶次がいるからだろうか。それでも結局はちょっとこちらによってきて、手を触らせてくれた。慶次はやっぱりそれを面白そうに見ていた。

「うーん」

冷たい。相変わらず。私は猿のてを握って、意味もなく上下にぶんぶんと振った。横にも振ってみた。でも猿は猿のままだった。人間の手は見えない。

「てこう?とやら、はずしてみてくれないかな」

駄目ならいい、と猿の目をみる。彼?は一つまばたきをした。ゆっくりと握っていた手を外されて、猿が自分の腕をなにやら弄りはじめる。その様子をみて、この前下で法螺貝がなっていた時、もしかしてこいつは本当の手を触らせてくれようとしていたのではと私は思った。なんだ、こりゃおかしいなと思うチャンスを自分で逃していたのか。

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