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それでも町と外の境目、その境界線に足を踏み入れるのにはとても勇気が必要だった。入口で立ちすくむ私のことを慶次は待っていてくれた。恐る恐る一歩足を踏み出して、中に入る。

「町だ」
「うん」
「こんな感じだったのか」

町の中を歩きながら、想像してたよりなんてことないな!と胸をはって慶次を見上げると彼は嬉しそうに破顔した。そうだろそうだろ?全然悪いところじゃないさ、とても楽しいところだよと私以上に喜んでいる。

「ありがとう」
「いやいや、なんてことないよ。俺は提案しただけ」
「でもきっかけをくれた」

あそこで慶次に合わなかったら、あの山小屋のなかで一人で死んでたかもしれない、とぼそりと呟くと慶次はあり得ない話じゃないのが怖いと言ってぶるりと体を震わせた。

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