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暫く二人と一匹で草原を歩いた後に、慶司はちょっとまっててといい残してどこかに消えた。肩にのったままの夢吉と顔を見合わせて首をかしげていると、慶次はなんかすごいおっきな馬をつれてきた。名前を松風と言うらしい。なんでも慶次は、松風を追っかけてたら迷って山の中で行き倒れたそうだ。

「こいつ気分屋なんだよなぁ」

しかも女好きだ。と慶次が苦笑する。私が慶次と一緒にいたから、松風を見つけたのだと言いたいらしい。

「松風」

顔を近づけて名前を呼ぶと、松風はぶるるると嘶いて返事をした。あらなかなかいいじゃないですか。めっちゃでかいのもいいじゃないですか。松風は私の手のひらをぺろぺろなめたあと、慶次の髪の毛をぐいぐいとひっぱった。

「ちょっ!松風!いてぇって!」
「慶次が羨ましい」
「なんで!?」
「なかがいい動物がたくさんいる」
「ああ・・・・・・」

私も一匹いるけど、そこまでじゃないのだ。
いいなぁと、羨望の眼差しで彼らを見つめる。あ、でも髪の毛を食べられたいわけじゃない。

「俺はいろんなところ旅してるからね、そのぶん出会いがあったのさ」
「そうか」
「ナマエさんもそこらを旅してみるといいよ。縁ってのはほんとに面白いからさ」
「そうだな」

慶次が案内してくれて、怖くなくなったら、試してみようか。手のひらで先ほど踏んづけた骨を弄びながら私は呟いた。慶次はそれがいいよと言ってくれた。

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