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したで色々あって、それから数日後に猿が現れた。なんだか毛並みが綺麗じゃない。こんなんだったっけ?と思いつつ手招きをする。大人しくちかよってきたところを抱きしめて、はぁと溜息。

「この前やまのしたで怖い事があったんだよ」

法螺貝がうるさくて、大変だった。
まだあの音が耳の奥に残ってるようだ、と頭をぶんぶんふる。猿はされるがままだった。ひぐ、としゃくりあげて手の甲で涙をぬぐう。こいつの前では泣いてばかりだ。でも人間じゃないから恥ずかしくないもん。

「痩せた?」

なんかちょっと小さくなったような気がすると呟けば腕の中の猿が身じろぎした。手をみせて、と言って猿の手を取る。その手は相変わらず冷たかった。どんなに冷たい手でも、奥の奥にはぬくもりがかくれているのに猿の手にはそれがない。石みたい。

「冷たいなぁ・・・・」

雪ににてる、と一人ごちる。それを聞いた猿がなにやらもう片方の手で自分の手をさわろうとしていたけど私はなんとなくそれをさせなかった。法螺貝は怖かったよ、ともう一度奴に報告すると、奴の手を握っていた指がほんの少し、小さな力で握り返された。慰めてくれるのかいと私は笑った。

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