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猿はそれからもちょこちょこと現れた。私が畑に現れた芋虫に悲鳴をあげたり慣れない料理に泣きべそをかいたり転んで足首を捻挫したりとまぁ色々なことをしてるあいだにききっ、あちらにもききっ、ほらそっちにもききっ。なんだこれ私は見張られてでもいるのか。

「食う?」

しかも全部同じ猿だ。わたしにはわかる。いやでも他の猿といっしょだったらわかんないかもしれない。

私は動物可愛がり精神は持ち合わせていないしどちらかと言えば人間以外は大嫌いだ。言葉通じないから外国人も嫌いだ。私は英語が苦手である。それはさておき、いつも顔を会わせるとなれば人間の言葉を理解しない猿にも少しは愛着が沸く。なので私は猿にほしがきをさしだした。

「…………あっ」

おずおずと受け取った猿に食べてみろと言ってみたはいいが、そういえばこいつは猿だったと思い出して私は憤りにばんばんと床を叩いた。やれ人恋しや。


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