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よく晴れた秋晴れの空を、はいいろがめいっぱい翼を広げて飛んでいる。とても気持ちがよさそうだ。いいなぁ、俺も飛んでみたいなぁ。こうして空を飛ぶはいいろを見るといつもそんな気持ちになる。それはきっと、風の欠片が我が身の内にあるからだ。

「・・・・・・・・・」

上を見上げてはいいろを見つめる俺の隣では、同じように幸村様がはいいろの事を見ている。はいいろが止まっても傷つかないように皮を巻いた腕を胸のあたりに掲げたまま口をぱかんと開けているのだけれど、そんなに口を開けていては虫が入ってしまうのではないだろうか。

「幸村様」
「・・・・・・・・」
「幸村様?」
「・・・・・・・・・ぁ、ああ、すみませぬ。つい見とれてしまいまして」
「いえ、」

えへへと照れ臭そうに笑った幸村様に首を振って、少々そこらの林にいってくるからここで待っていてくれなどということをもう少し敬語を交えて言った。彼は一瞬きょとんとした顔をして、それからこくりと頷いた。

「分かり申した・・・が、お気を付けて下され」
「はい、ありがとうございます」

それでは、と少し頭を下げて林へと駆けていく。目的は枯れ枝だ。今は昔と違って、懐に鉈より切れる刃物だって、それから岩塩よりもっと上等な塩だってある。よく乾いた枝を拾って歩きながら、そういえばこうして誰かと共に鷹狩りをするのは久しぶりだなとおもった。あかいのがこなくなってからは、一緒に野原に出かける人もいなくなってしまったのだ。

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