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それから、なんだかんだで俺はちゃいろいの……じゃなくて、幸村様と仲良くなった。主にはいいろのことで。

「はいいろ殿!」

うちの団子を食べたあと、幸村様は店の裏にまわってはいいろをなでたりながめたりする。他に鷹を飼っている人間を見たことがないので比較が出来なかったのだが、彼によるとはいいろはかなり質のいい鷹らしい。嬉しい。
なので一度だけゆずってくれと頼まれたが、丁寧にお断りした。それでも、と無理を言われたらどうしようかと思ったけれど大人しくひきさがってくれた。その代わりに時々様子を見せてくれと頼まれたので、こうして好きなようにさせている。

「そうそう、幸村様」
「幸村でよい」
「だめですよ、幸村様は領主様でしょう。示しがつきません」
「……むぅ」
「それでですね、話の続きなんですが。今度、ご一緒に鷹狩りはいかがでしょうか」

はいいろをお貸ししますよと口にすれば、幸村様は本当か!と叫んで子供のようにきゃっきゃとはしゃぎ始めた。時々、この人間は二つの人格をもっているのではないだろうかと思う。

「是非!是非とも!!」
「ありがとうございます。来週あたりを予定しているのですが、お時間の方は空いてらっしゃいますか?」
「……なに、時間はどうとでもなる」
「あまり無理はしないでくださいね、鷹狩り自体はいつでも行えますので」
「うむ!」

時間の有無を聞かれたときに少々腹黒い笑みを浮かべた彼をたしなめるようにそう言えば、にこやかな笑顔が帰ってきた。その顔を見てぽり、と頬を掻く。
言ってからなんだけど、ちょっと、気軽に誘いすぎたかもしれない。

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