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スノードロップの花束を君にと捧げたら、ライオンはどんな顔をするのでしょう。足が鳴ることはもうなくなってきたのだけれど、代わりにおにんぎょさんたちは来なくなった。ドーナツの穴のような気分になる。

「………まるで鉄格子のような無花果だこと」

ぺたぺたと格子を触る。もうこの木から芽が萌え出ることはないのだろう。台風の目がつぶれたら温帯低気圧になってしまうように、形から外れてしまったのだから。

「ねぇ誰か、お話がしたいの、砂嵐が消えないのよ」

さぁさぁと雨のように振る音は決して気のせいではなく、私の頭の中で常に鳴り響いている。TV塔からの電波は最近は少し治まったのだけど今度は情報の雨がうるさいわ。少しあっちを覗きすぎたのかもしれない。レントゲンの放射線が肌を虫歯にしてしまったのかも。

ぱらぱらと目蓋の奥に散る映像にため息をついてわたしはそっとカーテンに閉じる。思考を邪魔するいろんな欠片は今日はあまりふってこない。すこし自分が戻ってきた感じがする。なんでだろう、正しくない者にも雨が降り注いだから?不思議だな。

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