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「ナマエ殿、随分と痩せもうしたか」
「キシリトールのタイヤの旋律を夜中に聞いたせいです」
「………そうですか」

かわいそうなねずみに、これに物を食べさせているのかと源次郎が島へ渡る。そこの芍薬を一輪摘み取ってきてほしいとおもったけれどどうやら無理みたい。だってバナナは弾丸にはいりたくないみたいなのだもの。

「これではナマエ殿の身がもたないでしょう」
「お方様のご命令でして……こうして訳のわからぬことを吐きつづけるだけなのならいっそ息の根をと」
「………何?ナマエ殿の元を尋ねるものすべて、敵に回すおつもりか」

ああ、囮の鮎が逃げていくわ。犬が流れた川には魂をこめて、扇風機を捧げないとどうしようもないのに。
かちゃかちゃと何かの音がして、沢山の殻が入ってきた。そんなに肺には詰め込めない。タンクにいれた髪の束が無くなってしまう。

「服に入らないわ」
「せめて、その器一つはお空けになってください。今の貴女にはややきついかもしれませぬが」
「海を、見せてくれるなら」
「この場の近くに海は無い故、何より貴女の体力が持たぬかと」
「そうね、私は燃え盛る焔しか聞いたことがないから」

手ずからすくって渡される粥を噛んで飲み込む。花の香りがするわ。さくらかしらと首をかしげている間にそれはどこかに飛んでいってしまった。

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