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あずきが食べたい、とかわいそうな猫に尋ねたらそれはおしろいのようになって器を運んできた。いととんぼのように赤いそれはまるで鰯の内臓に黒々としている。

「清水のようね」

そ、と唇に添えられた匙をくちにふくむ。芳しい萌芽が空をあおぎ漏れ出る木漏れ日は母の微笑みのように慈愛に満ちている。口のなかの宇宙を噛み締めてわたしは土のなかに潜るの。火口に降りたってそれを吐き出し美味しいパンプキンスープにするわ。つぎはいつきてくれるのかしら。明日?明後日?安息日?紙から答えが帰ってきてくれたことは一度もない。

「もうりはげんきかしら?」
「は、はい、あの方は息災でいらっしゃいます」
「ひいらぎには鬼の両手が必要なのをあなた知っていて?」

匙を、もう一噛みねだりたかったけれどすでにケシゴムに消されていた。私の頭のなかの貝は随分と活動的によく動く。きっと涙はもう十分に吐き出したのだろう。海にとけたそれをキリンは一体どうして飲み干すのか。

「わたし、もっとおはなしがしたいわ」

甘い息の行方を、白く宙に問いかける。栗が落ちる音がして、曼珠沙華の鼻は今日も満開なのだ。きつねもが避けるそれを、人は何故食べるのだろう。

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