佐助成り代わり7


師匠は荷物を整理しろと言ったが、私に荷物と呼べる荷物は何もない。つまりかすがを整理しろ、お前にべったりなあいつに言い聞かせろと言うわけだ。いやはや、大変だった。時間ぎりぎりまで引っ付いて離れなかったから、もう私は心を鬼にしてゆっくり諭してやっとのことで出発したんだ。うう、心が痛い。

「……行くぞ」
「はい」

住処から外に出ると、すでに師匠が待っていた。相変わらずの無表情だ。私と並んで無表情師弟。嫌すぎる。
内心そんなことを考えながらもひょいひょいと地面ではなく木の上を駆け抜けて、道ならぬ道を行く。これ、結構時間を短縮できるのだ。やっぱ地面だとね、ほら、狼とか熊とかたまにでてくるから。ロスタイムは出来る限りなくせと言うわけで、忍びはその多くが木の上を走って移動する。全く、人間止めた奴らばかりだ。私も最近はその一員に入りそうではあるけれど、……憂鬱だ。実に憂鬱である。一般人に戻りたい。

なんてことを考えてたら師匠がいきなり下に飛び降りた。あ、もう木がないのか。
慌てて下に降りて、傍に降り立つとすたすた歩いて先にいかれた。どうやらここからは歩いていくらしい。師匠は歩くのが速い。

「一つ言っておく」
「……はい」
「お前の任務は子守りだ」
「…………は、い?」
「行くぞ」

子守りってあの、子守り?おんぶ紐背負って子守歌とか歌ったりする、あれ?
いきなりの衝撃発言に固まる私に構わず師匠は先にどんどん進む。嘘だろ承太郎、子守りなんてやったことないしそんなの忍びじゃなくてもいいじゃんか!

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