佐助成り代わり6


ここから出ていく事を告げると、かすがはそりゃあ泣いた。身体中の水分を出してるんじゃないかってぐらいに泣いた。しかし悲しいかな、私の感情は外に出なくなってしまったのだ。こんなに悲しいのに涙の一つもでてこない。体と感情の間に仕切りが建っている。嫌な訓練の成果だ。

「かすが……」
「嫌だ!嫌だ!私も連れていけ佐助!」

わあわあと泣きわめく彼女の体を宥めるために抱き締めると、直ぐに背中に回ってきた細い腕が私の服をぎゅうと握った。母にすがる子供のように。ああ、私はこの子を本当に置いていかなきゃいけないんだ。この私の家族を。

「さすけ、さ、すけ」
「……なぁにかすが」
「きょうは、一緒に、寝よう、よ。まえ、みたいに」
「うん、いいよ」

ひく、と嗚咽を漏らしながらかすがが私の胸に顔を擦り付けて、小さな声でそう呟いた。そう、私達がもっと幼かったときは、くっつきあって寝ていたのだ。男と女の特徴が出始めてからはなんとなく止めてたんだけど。だってほら生理現象は私たちの意思に関係なく起こるじゃないか。かすがが私と自分、両方にパニくってからどちらからともなく一旦別々で寝ようかという案が出てきた。まぁかすがはたまにこっちくっついてきたりしてたんだけどね。うん、でも今日は一緒に寝ようね。だってもしかしたら、これが最後かもしれないもの。



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