シャチ26


海上を飛び交う鳥達は、情報を沢山もっている。空から色々なものが見えるからだ。だから最近私は海面に顔をだし、日光が体を焼くのも無視して彼らの会話を聞いている。運が良ければ元親のことが聞けるかもしれない。

『あっちでな、なんか煙が出てた』
『煙?じゃあけむたいからいかない』
『いかない』
『にほんあしがなんかやってる?』
『ぴかぴかしてるの、ほしいな』
『食べられちゃうよ』

にゃあにゃあとうみねこが情報交換をしている。煙は、戦の事だろうか。そうそう、最近気がついたのだがどうやらこの時代は「戦国時代」らしい。夜、浜辺の方に行ってみたときに毛利元就がどうのと誰かが話しているのを聞いた。たしか・・・たしか毛利は戦国時代の有名な武将だ。私の記憶が正しければだけど。

『なんかな、おれらの羽毛みたいなしろいあたまのやつがな』
『にほんあしってくろくねぇ?』
『いやしろかった』
『へんなにほんあし』
『しろいにほんあしか』

白髪。それは元親だろうか、それともおじいさんだろうか。でも戦にはおじいさん、でれないだろう。体力的に。

『海のところでぴかぴかしてる、みどりいのとぶんぶんしてた』
『あぶない?』
『煙』
『じゃあ陸にはいかない?』
『せきがでるよ』
『じゃあやめよう』

にゃあにゃあ、うみねこたちが頭上で声高らかに鳴き交わす。どうやら満場一致で陸地にはいかないことに決めたらしい。頭がゆるふわな会話を聞いていた私はちょっとだけ彼らの会話内容をまとめるのに苦労したが、まぁなんとなく理解した。

陸地の方で戦をしてる。煙が出てるってことは火事。海だけど陸って言葉が出てきたからきっと、そこまで陸から離れてない。白髪の人間は緑の・・・ぴかぴかひかってる人間と戦ってる?

「・・・・くぁあ?」

最後がよくわからない。でも白髪は多分元親だ。
第六感に従うことにして、私は陸地へと泳ぎ出す。海水の中に漂う血の匂いは、陸地に近づくに従って次第に濃くなっていく。きっとまた、人がたくさん死んだのだろう。

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