シャチ25


弥三郎は顔面をちょっぴり赤くさせて家に帰った。羞恥にではない、顔面に思い切り海水を叩きつけられた衝撃にだ。やりすぎたかなと思ったけど、でも彼は笑ったので無問題。また会うって約束をして、新しい事も教えてもらった。なんと、弥三郎は元親になったらしい。

「元服っていってよぉ・・・・あー、なんつーの?大人になった証って言うの?」

頭をぽりぽり掻きながら弥三郎、いや元親はそう私に説明してくれた。子供の時と大人の時じゃ名前が違うなんて、変なかんじだなぁと思いつつ了承の返事を返す。

「弥三郎って、久しぶりに呼ばれた」

もうそう呼ぶ奴はいないんだと微笑んで、帰る前に元親は私に手を振った。私も口を海面からだして、それに答える。

「じゃあな、まだら!」
「ぎゅう!」

彼はこれから内陸のほうに行くらしい。何故そこにいくのか、それは教えてもらえなかったけどその事を私に話す彼の瞳は暗く濁っていた。復讐に燃えていた。きっと、あの沢山の人を殺した奴を、どうにかしに行くんだろう。海低に漂っていたあの人たちを、彼は家族のようなものだったと言っていたから。

「きゅ・・・・」

復讐は果たして良いものなのか、悪いものなのか。私には判断できない。でも、好きにするのが一番だと思う。

元親の背中が豆粒のようになって、それが見えなくなるまで彼を見送ってから、私は群れの元へ戻るために海中に勢いよく潜り込んだ。

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