4


きいろもすくすくと育った。怪我も治った。天気が悪い日は少しその部分を気にするようなそぶりを見せるが、日常生活に支障はない。はいいろは、番を見つけたようだ。雌の鷹を連れてきた。お前雄だったのか。

「はいいろの子供は、いつ生まれるかな」

巣作りのためか、せっせと木の枝を咥えてはどこかに飛んでいくはいいろを見送る。きいろはぴょんぴょんと野原を駆けまわって遊んでいる。偶に何か捕まえて食べているみたいだ。きいろはしっかり狩りをする。この前は若いたぬきを捕まえて持ってきた。たぬきの毛皮は高く売れるから、随分家が潤ったようだ。親は城下町に引っ越そうか、なんて話をしていた。

「あかいのは何処に行ったんだろう」

最後に出会ってから、もう随分時間が立つ。その間にきいろはすっかり大きくなったしはいいろには新しい家族が出来た。季節が二つ廻った。こんなに長い間、姿を見せないのは珍しい。

「・・・・・・・・・・」

近くにあったたんぽぽの茎を手折り、先についている綿毛をふぅと吹く。微かに風を起こしてやるとちいさなふわふわとした種はどこまでもどこまでも飛んでいく。風はいいものだ。色んな匂いを運んでくる。人間になってから身につけた不思議な能力は相変わらず良い使い方がわからないが、こうした小さな事に役に立っている。でも、どうせなら鳥に生まれたかったとも思う。はいいろはとても気持ちよさそうに空を飛ぶから。

「雨が降るな」

すん、と鼻を鳴らすと湿った土の匂いがした。きいろの名前を呼んで、家に帰るぞと促す。はいいろは呼ばない。呼べば来るだろうけど、今は鷲の家族と一緒に居た方がいい。

「きいろってば」

まだまだ遊び足りなそうなきいろは、兎の骨であっけなく買収された。

prev next

[back]