シャチ23


幻聴。男を船に送り届けた時も聞こえたし、もう歳だろうかと目を開ける。するとそこには半裸の銀髪ゴリマッチョが・・・

「ぎぃーっ!?」
「あ、おいまだら!お・・・あー、ええと、・・・僕だよ!や、弥三郎!」
「ぎゅえー!!!!!」
「まっ、まだらー!!」

あのはかなげな美少年がこんなムキムキに大変身。月日の流れは恐ろしい。
その現実に混乱した私は思いっきり水を跳ねあげ、海の中に潜り込んだ。弥三郎を名乗る男が慌てて私の名前を呼ぶが、怖くて無理だ。イコールで結び付けられない。遺伝ってのもあるかもしれないけど、・・・でも国親はあんな筋肉じゃなかったよ!

『まだらぁー、おーい・・・・』
「ぎゅ、ぎゅい・・・・・・」

途方に暮れたように私の名前を呼ぶ彼。弥三郎とは似ても似つかない大人の声。でも私を呼ぶその調子が、昔のあの子と一緒。本当に彼なのだろうか、面影というか変わらないところと言ったらその声の調子と銀髪しかないけれど。

「ぎゅ・・・・」
「まだら!」

恐る恐る岩場から少し離れた水面に顔を出す。すると少し泣きそうな顔になっていた彼が私をみて安堵にみちた表情をして、それから海におもいっきりダイブした。あ、この思いっきりの良さ。本当に弥三郎だ。だって普通の人間ならシャチがいる海に飛び込みなんてしないもの。

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