シャチ22


目が覚めると、私は海底に一人で横たわっていた。何故こんな所に一人で、とぼけた頭で考えて、男を船まで送って力尽きたんだと思いだす。

「・・・・・・・」

ぐい、とまだ軽い痛みが残るひれで水を一掻き、水面に上がる。辺りを見回すと随分近くに陸の影。こんなところまで流されたのかと驚きながら、よく命が会ったものだと溜息をついた。普段ならば、そんなシャチなんぞ良い獲物だ。なんせ抵抗しないのだから。

「・・・・・ぎぃ」

多分あの、大量の人間の死体がその原因だ。皆あっちに気を取られていて、だから私は襲われなかった。微妙な気持ちになりながら、近くまで寄ったことだしと以前弥三郎と会っていた岩場まで泳いでいく。あの子は二度と現れないのだろうけど、思い出に浸るぐらいはいいはずだ。

「・・・・・・・」

記憶にあるよりも随分小さく、波に削られてしまったその場所。私も大きくなったからかもしれない。大人になってから昔遊んだ公園を覗くと、その小ささに呆気にとられるようなものかもしれない。途中で拾ってきた貝殻を置いた岩に寄り添いながら、懐かしさに目を閉じる。ここに弥三郎がいれば完璧なのにな。

「まだら」

なんてこった、幻聴まで聞こえてきたじゃないか。

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