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「うーん……」
ヒンバスゲットだぜまでは問題ない。しかし私にはさらなる強敵が現れた。それは観察レポート。そう、私はオーキド博士に頼まれたヒンバスの観察レポートをつけねばならないのである。すっかり失念していた。
「りぃ?」
「ん、いやぁ。どう書けばいいのかなぁと思ってね」
手持ちぶさたにふらふらとシャープペンを揺らす私の手元をチェリムが見つめる。今日ヒンバスがしたことと言えばポケモンフーズの味を選んだり自分が入る水槽を選んだりしたぐらいだ。今はその水槽の中でうつらうつらと漂っている。彼(♂だった)も疲れたんだろう。
「チェリムは眠くない?」
「りむっ!」
「そう、じゃあおいしいみずでも飲む?」
「りっ……!」
その言葉にきらきらと目を輝かせてチェリムが跳ねる。くさタイプだからか、彼女はミックスオレやサイコソーダよりもおいしいみずの方を好む。ヒンバスはミックスオレを飲めるだろうかと考えながら冷蔵庫を開けて、ミックスオレとおいしいみずの缶を取り出す。
「りぃー」
「はいチェリム、……ヒンバス、寝ちゃった?」
ミックスオレの缶を持ったま水槽の傍に寄って彼に声をかける。するとヒンバスはぱちりとめを開けて水面に顔をだしてくれた。ちらちらと興味深そうに缶を見るのを見て、興味はあるのかなと微笑む。
「甘いものは好きかしら?」
かしゅり、とプルタブを開ける音にヒンバスが大きく目を開く。どうやら驚いたようだ。これは飲み物なのだと説明して口を開けてもらう。そこにとくとくとミックスオレを注ぎ込むと目の色が変わった。おお……すごいきらきらしてる。
「もっと飲む?」
こくこくと頷いたヒンバスは、ミックスオレを大層お気に召したようだ。みずタイプでも水中で飲み物が飲める!と言う特注の水筒にミックスオレを注いで渡してあげると大事そうに抱えて、にこにこ嬉しそうに飲んでいた。その姿を見て自然に笑みが口元に浮かぶ。最初はブサイクなポケモンだなぁと思ったけど、なんだ。全然可愛いじゃん。
こんな可愛い子を捨てるやつの気が知れんと一人で怒ってみたはいいが、おいしいみずの缶を両手に抱えたチェリムが、自分も水筒が欲しくなったようでビニール紐を使い自分の首に缶を下げていたのを見てなんだかどうでも良くなってしまった。とりあえずポケギアで写真を撮っておこう。
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