シャチ9


「名前教えて逆叉さん」
「きゅるる……」

いや無理でしょってば。
私の体をぺたぺた触ったり歯を恐る恐る触ったり好き勝手してる子供、もとい弥三郎。この子は天然なところがあるようだ。動物は喋れない事を思い出せ。

「名前、ないの?」
「きゅるる〜」

忘れちゃったんだ。だからもうそれでよい。逆叉さんでよい。
弥三郎の問いかけに頭を縦に振って答えると、彼、いや彼女?はにこりと笑って私に抱きついてきた。何がそんなに嬉しいのだろうか。

「じゃあ僕が、逆叉さんに名前あげてもいい?」
「きゅう」

うん

「ほんと?」
「きゃるる」

うんいいよ

「ありがとう!じゃあねぇ、んっとねぇ……」

むむむと私の事を難しい顔をしながら眺める弥三郎。あれ?意志疎通できてやがるんですが。どういうことなの。

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